社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
相良さんのバカ、ばか、馬鹿っ!


あんなに至近距離だとキスされると勘違いしても仕方ないと思う。


敬語をやめたにしても、性格までもが謙虚じゃなくなるって何なの!


私は相良さんを引き離そうと大股で歩いていたつもりだったが、高身長の相良さんの歩幅に適うはずもなく直ぐに追いつかれた。


「和奏はやっぱり小さい」


追いつくと頭をポンポンされた後、優しく撫でられる。


見上げると約25センチの差は大きいな、と改めて思う。


二度目の正直で頭に乗せられた左手を両手で掴み、そっと下ろす。


どんな反応をするのか知りたくて、下ろした左手を右手でギュッと握る。


街灯がついているだけの路地裏の通り。


歩くだけでも暑さを感じて、肌が汗ばむ。


「手…繋ぎたいの?」


「だ、駄目ですか?」


「…駄目じゃないけど」


手を繋いだ時、見下ろす様に私を見て訊ねる相良さんは少しだけ、照れているかの様に感じられた。


お店は直ぐ近くだから、長い時間、手を繋げる訳ではないけれど、私を受け入れてくれているのだと思うと嬉しかった。
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