Lingerie~after story~



高らかに部屋中に鳴り響いたチャイムの音には張りつめていた緊張をいい意味で断ち切られたと感じる。

それでも『助かった』という本心をうっかり口から零さなかったのは正解だと、目の前のあからさまに不機嫌な姿を捉えて頷きはひっそり心の中で。

「あの…ね?九条くん、……退い……」

「嫌だ、」

「い…やいやいや、『嫌だ』とかじゃなくて…」

ほら、こんな会話の合間にまた…。

こっちの込み合った状態などお構いなしに再度来訪を示す音が鳴り響き、むしろそのお構いなしが私としては非常に天の助けの如く感じるこの瞬間。

なのに、対峙する不機嫌な彼としてはどこまでもその存在を無いものとしたいらしく、頑として私の上から退こうとしてくれないのだ。

そう……私の上。

おかしい。

確かについさっきまでどこか気まずい空気を感じつつも距離間保って帰路についていたというのに。

その気まずさ継続で自宅のマンションに帰宅しても、それなりにいつもの感じに戻りつつあった筈なのに。

その気まずさを生んだのは多分私で、少々遡って簡単に語ってしまえば付き合いたての絶妙な距離と関係の葛藤というのか。

彼と響きとして恋人になったのは1週間前。

『体目当て』だと異色な告白をされ、それに対する私も『一緒に暮らせるなら』と異色な返答を返してその関係は契約の如く結ばれた。


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