愛人契約
「それこそ、駄目よ。」

「どうして!」

「あの女は、私の母親だからよ!」

「えっ……」

本田さんの顔色が、見る見るうちに青くなっていった。

「日満理が……真依さんの娘?」

そのうちよろよろと、本田さんは壁に手を着いた。


「知らなかったのでしょう?」

「ああ……」

もう片方の手で、顔を覆ったその隙間から、本田さんの涙が見えた。

泣いているの?

自分がしてしまった罪の重さに。

それとも。


私達が出会ってしまった運命に……


「これで分かったはずよ。」

「日満理!待ってくれ!」

本田さんが止めるのも聞かず、私は自分の道を、歩き出した。

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