秘密の糸Season1㊦
第74話黒い塊
【円花side】

チュンチュン



ジリリリ


ポチ



「んー!」


私は近くに置いてある目覚ましの時計の音を止めた。


「もう朝か~」




朝からカーテンの隙間から眩い光が照らしていた。


「よし、起きるか」




そして私はベッドから起き上がり、支度をし階段を降りた。


トントントン


「あ、おはよ円花」


台所ではお母さんが朝食を作っていた。



「おはよーお母さん」



今日もいつもと変わらない日常を迎える。



私は洗面所に行き、歯を磨いた。



シュコシュコ


そして今日も洗面所で確認する。


「うん、消えてない」


このキスマークを見る度に、私はまだ雪都の物なんだと安心する。

私にとってこのキスマークは大事な大事な印だ。


私はギュッと服を握りしめた。



「ご飯出来てるよー」


「はーい」


そして私は席に着き、朝食を食べた。


「頂きまーす!」


朝食を食べていたその時、お母さんが口を開いた。







「…
「井上さん優しいじゃん!
最初最低なヤツだったけど良い人だったんだ!」
「確かに…円花。井上さんの事私に相談してたもんね」
「そうだったね…」
「で、円花はその優しさに甘えたんだ〜?」
「う、うん」
「優しかったら甘えちゃうよね」
二人は分かってくれた。
「まあ、そんな事あったし、
そんな時差し伸べられた手に掴まるのは別に良いと思う。
井上さん優しいし、甘えたくなるのも分かる。
だけどね円花、優しいからって甘えてばかりはだめだよ?
その優しさに甘えて
気がつけば今度は自分が束縛しちゃうなんて事もあるから。
束縛なんてしたら男は離れていくからね?」
舞由香に言われた時、私はドキッとした。
束縛…私が前晋ちゃんにされた事だ。
今度は私がしてしまう…。
それだけはないはずだ…。
「う、うん分かってるよ」
その時言われた舞由香の言葉が
“黒い塊“のようにドンッと私の胸に落ちた。
この時、私は気づいていなかった。
私がしていた行動全部がいつのまにか
雪都を苦しめていたことに…



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