蜜月同棲~24時間独占されています~
助手席に乗せられ、シートベルトをするとすぐに運転席に克己くんが乗り込んでくる。
バン! と閉まった扉の音が大きくて、驚いて彼の横顔を見た。


「お前なあ!」


いきなり大きな声を出され、訳が分からなかった。
さっきまでの優しい笑顔はなんだったのと思うくらいに怖い顔で、思わず身を竦めてしまう。


「絡まれたんなら、すぐ逃げるか助け呼べ。何応戦してんだ」

「ご、ごめん」

「逆上されて怪我でもしたらどうすんだよ!」


まさか、こんなに怒鳴られるとは思っていなくて、驚いて固まったままもう一度「ごめんなさい」と口にする。
克己くんに本気で怒られたのは、初めてのことだった。


蚊の鳴くような小さな声になってしまっていて、克己くんが気まずそうに目を逸らし、自分の髪を乱暴にかき上げた。


「……悪い。デカい声出した」

「ううん……私が悪かったの、ごめんなさい」

「腕掴まれてんのが見えて、焦った」



ハンドルに顔を伏せ深く溜息を吐き、気を落ち着かせようとしているのがわかる。
次に顔を上げた時には、険しさは消えていた。


「心配した」


言いながら、まっすぐに伸びてきた手は躊躇うことなく私の頬を包んだ。
労わるように撫でてすぐに離れていったけれど、たったそれだけの仕草に私の鼓動は反応してしまう。


……だめだ。ドキドキして止まらない。


自分の気持ちを自覚してしまったから、余計なのかもしれない。



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