蜜月同棲~24時間独占されています~
それから、一体何杯飲んだだろうか。
アルコールで箍が外れれば、あのふたりの前では言えなかったことが次から次へと溢れて出た。


「大体ね、新田さんは卑怯だと思うの!」

「うんうん」

「子供が出来た。だから何? それ以上言わないのってあれでしょ、私に察しろってことでしょ? 自分が言い難いから私に別れようって言わせただけのことだよね!?」


少し気の優しすぎるところがあるな、と感じたことはある。たまに優柔不断なところがあって、だけどそれは相手の気持ちが関わる時に顕著であったから、優しさが故の一面なのだと思ってた。だけどこうなってみれば、優しさイコール優柔不断で、しかも彼の優しさは余りにも無責任なものだった。


「……優しい、人だったのに」


綾奈の背中を撫でていた姿が脳裏に蘇る。それだけでぶわりと涙が溢れて、声が震えた。


「一緒にいればきっとずっと楽しく過ごせる、そう思える人だったのに」

「違ったんだよ、結婚する前にわかって良かったんだよ、ね。柚香にはきっともっといい人が現れる!」


自棄酒なんて、初めてのことだった。お酒は好きだけれど、嫌なことがあってお酒に逃げる、という心理が私にはよくわからなかったのだが、今ならわかる。


酔えば楽になる気がした。裏切られた心の痛みよりも、悪酔いの苦しさの方が楽な気がした。

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