蜜月同棲~24時間独占されています~
克己くんの言葉が、頭の中で何度もリピートされた。
それでも本当の出来事だと思えなくて、頭の中が真っ白でまともな返事が返せない。


「う、そ」

「じゃないよ」


信じられなかった。
克己くんが、というわけじゃない。
この恋が報われるのかもしれないという状況が夢のようだったのだ。


学生の頃はずっと片思いで、そのまま失恋した。
バレンタインに女の子とふたりで居るところを見た、それだけで諦めてしまったのはきっと、私が幼馴染で妹扱いでしかないことをちゃんと感じていたからだ。


それが、私の破談でふたたび会う機会を得て、まだ間もない。
一緒に暮らして、共有する時間が多くなっているとしても、だ。


そんな夢みたいなことが、起きるもの?
本当に?


”克己くんは私を裏切ったりしない?”


まだ乾き切らない傷が疼いて、「私も好き」だと言いかける唇を一瞬、引き留めた。


彼が首筋から顔を上げ、呆然と見上げる私の頬に優しく触れる。
風で靡く髪を避け、頬の肌を親指で撫でた。


「柚香は焦らなくていい」

「克己くん」

「でも逃がさない」


この頬の触れる温もりを、私はただ信じていれば良かったのかもしれない。
だけどこの時はどうしても、素直に頷くことが怖くて。


もう傷つきたくはない、と、裏切られた傷の痛みが邪魔して、好きなのに『はい』と言えない。


そんな私のこともわかって、彼は『焦らなくていい』と言ってくれたのだと、気付くのはずっと後のことだった。



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