蜜月同棲~24時間独占されています~

昨日、新田さんが課長に結婚の破談と綾奈の妊娠のことを報告した。いずれわかることだと、腹をくくってのことだと思う。課長以外には私も新田さんも式の中止だけ報告し、綾奈のことは言わなかったのだけど、元からどうやら綾奈と新田さんの仲を疑う噂も流れ始めていたところだったらしい。すぐにその二つの件は結び付けられひとつの推測となって、たった一日で噂は広がってしまっていた。


はっきり言って、仕事がとてもやりづらい。
溜息を吐きながら、デスクの上の新商品の資料を手に取る。見た目も可愛らしいプチプラコスメ……綾奈の担当だった。


ふう……と深く息を吐き出す。心の中に溜まった嫌な感情を全部吐き出してしまいたかったのだ。だけどそう簡単なものでもない。資料を手に綾奈のデスクに近づくと、一気に視線が集まったような気がして、更には彼女にも随分怯えた目を向けられた。


冗談じゃない、どうして私がそんな目で見られないといけないの。


「綾奈、これ。新商品のコスメ」

「えっ?」

「サイトの販売ページの作成頼める? 今は資料だけだけど、明日には多分現物が届くから、販促用の写真とキャッチフレーズとお願い」


資料を差し出しながらそう言うと、彼女はいつもより硬い表情ではあったけれど「わかりました」と受け取った。仕事に支障は出したくないという考えは私と同じようで、助かったけれど。


やりにくいことに、全く変わりはなく、もう何度目かわからない溜息が零れた。


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