俺様社長ときゅん甘同居
それを、ちょこちょこ見かけて俺の気持ちに気付いた三木には軽く牽制をかけられたし、和樹さんも佐伯も気付いた。
それくらいわかり易く接していた。
俺は気持ちを隠してはいない。
しかし、当の晶子は俺の気持ちに全く気付かない。
この間もあまりの忙しさに、和樹さんの嫁さんにフォローに来てもらえばいいと提案した。
事務一人なので、ここ1年ほどはかなり負担が増えていた。

しかし、その提案はサラっと却下だった。
タイミング的に無理だった。
和樹さんの嫁さんと仲のいい晶子だから聞いていたのだろう。
二人目をどうやら授かったらしい。
それは確かに仕事には呼べない。
年度末の忙しい日々の中締め日が訪れた。
忙しさはピークを過ぎてやっと落ち着いたのか、今朝は少し顔色も戻っていた晶子を終業後の食事に誘った。
もちろん、デートのつもりで。
しかし、俺の気持ちはしっかり伝わらなかったようだ。

「締め切りが、締め切りさえなければ!晶子さんと二人きりになんてしないのに!」

パソコンにかじりつきながらも、こちらの会話が聞こえていた三木が心の声をダダ漏れさせた。
聞こえたのは俺と佐伯だ。
その時俺の顔を確認した佐伯は理解したようで

「三木さん、あとは伊藤さんの意思ですよ。見守りましょう?」

と言いながら佐伯も来週提出期限の家具デザインを仕上げていた。
こうして、各々手持ちの仕事をしながら定時を迎えた。
今日はこれからが俺の勝負だ。
絶対振り向かせてみせる。

俺は密かに気合を入れつつ、いつでも大丈夫な仕事を片づけながら晶子が仕事が終わるのを待っていた。
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