白衣の聖人による愛深き教示

　だがしかし、意気揚々としていた気持ちは、腑抜けたチャイムの音にくじかれる。

「あーん、もうっ！　昼休み終わっちゃったじゃない！」
「終業後が勝負ね」

　口々に落胆の色を見せるメイクばりばりの女子たちが、途端に列を崩して引き返していく。
　出遅れた私は、押し寄せる香水のミックス風味の波に酔いながら、前に進めないまま抱きしめた袋を守りながら踏ん張った。

　せっかく先輩の理子さんに、お昼休憩を先に譲ってもらったんだ……ここで引き下がってなるものか！

　お昼前に窓口にやってきたおばあちゃんの定期預金の手続きで、思いのほか時間を取られてしまった。
　おばあちゃんの相手が終わった頃はすでに、昼休み終了10分前。
　窓口は席を空けられないから交代で昼休憩を取るようになっているけれど、信託課や貸付課などの部署はきっちり１２時からの一時間が昼休みだ。

　だとするなら……
　時間差で訪れた私にとっては、今が最高のチャンスだ！
　神様、おばあちゃん、理子先輩、ありがとう！