それでも、幸運の女神は微笑む
静かな紫紺の瞳に目をぱちぱちした。


「しゃま?わたし、アサヒ」

「ああ。敬称ですよ」

「けーす?」

「敬称です」

「けーすじゃ!」

「け、い、しょ、う」

「け、い、す、じゃ」

「しょ」

「す?」

「しょ」

「すいよー?」

「しょ」

「みゅーん・・・すい、すぃーよー・・・びゅびゅ・・・しょ?」

「ええ。けいしょう」

「けいしょじゃ?」

「う」

「じゃ」

「う」

「びゅ」

「う」

「びゅ・・・みゅ?びゅぅーうー・・・う?」

「そうです。けいしょう」

「けいしょう!」



言えた気がする!!!

ぱあっと顔を明るくすれば、ムムがぱちりと目を瞬いて、そのあとくすりと笑った。


思わず零れ落ちたような、温かな笑い声だった。





「ふふっ・・・。すみません。
アサヒ、とお呼びしても構いませんか?」

「ひょ?わたし、アサヒだす?」

「ええ、そうですね。
ハインド様、アサヒに敬称は合いませんね」

「そうだな。
特にかしこまる必要はないんじゃないか?」

「そうかもしれませんが、愛し子様がお連れになったと聞いたものですから」

「連れ帰ったのに特に意味はない」

「そうだったのですか。
では、アサヒでよろしいでしょうか?」

「びゅん!」


よくわからなかったけど、ムッシェさんもムムも、なんだか温かな笑顔を浮かべていたから、私は勢いよく頷いた。




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