それでも、幸運の女神は微笑む
『い、いやいやいやいや!だから無理だって!』

『やってみなきゃわかんないよ』

『うちの祖父さんは無理だったんだよ!』

『それ』


私はピシッと夕日を指差した。



『夕日のお祖父さん“は”だよね?
私“は”帰れるかもしれない』

『なっ』

『それに』


何か言おうとした夕日を遮った。



『もしかしたら、帰りたくなかったから帰らなかったのかもしれないし』

『え』

『だって夕日のお祖父さんってことは、結婚してるんでしょ?
愛する人ができたから帰らなかったとしてもおかしくないんじゃない?』



私の指摘に、夕日は目を見開いて・・・

歪な笑みを浮かべた。



『それはない。祖父さんはいつも帰りたいって言ってたよ』

『え?』


予想外の反応に目を瞬く私に、泣きそうな顔をして夕日は言った。




『祖父さんはニホンに恋人がいたんだ。
それなのに祖母さんが権力使って無理矢理婿にしたんだ』

『な、何それ・・・!?』


衝撃的な事実に目を見開く私に、夕日は言う。



『祖父さんは祖母さんを愛してなかった。
ずっと恋人を想って帰る方法を探ってた』


そうして、真っ直ぐに真っ直ぐに、射抜くように私を見て彼は言う。



『だから、帰る方法なんてないんだ』


威力は抜群。

私は瀕死だ。


それでも。



『諦めない。
私は、私が観念するまで帰る方法を探す』


私はしっかりと宣言した。





< 90 / 153 >

この作品をシェア

pagetop