それでも、幸運の女神は微笑む
『そう・・・。
残念だよアサヒ』



夕日は悲し気に眉を八の字にさせて———



『君は僕の敵だね』





————私に口づけた。







『へ・・・?』


突然のことにぽかんとする私の耳に、ロイの声が聞こえた。




「お前っ・・・チェナティッドの“影”か!?」

「さあ?
私に構っている暇はないと思うよ?“赤き獣(ケダモノ)”さん」

「待て!!!
・・・チッ!クソがっ!」



するりと私から離れてどこかへ走り去る夕日。

それを追おうとしていたロイは、突進してきた黒い毛に赤い瞳の猪により阻まれた。


それに目をとられているうちに、夕日はもう見えなくなっていた。




『どういう、こと・・・?』


呆然と呟く私の手首を、冷たい目をしたロイが掴んだ。

強い力よりも、その目の冷たさが痛かった。




「見捨てられたみたいだな、アサヒ。
吐けよ、知ってること全部」


ねえ、ロイ。

私の名前しかわからないよ。


ねえ、ロイ。

なんで、私の両手首を縄で縛るの?



わからなくて、わかりたくなくて。

ゆらゆらと瞳を揺らした私のお腹に、ロイの拳がめり込んで。






意識が、途絶えた。






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