薔薇姫《短編》
指を鳴らすと広間の窓という窓、ドアというドアが開け放たれました。
すでに、城の外は茨で覆われ、廊下もびっしりと茨が這い回り、あろうことかうねうねと動いているではありませんか。


王子や騎士達は、それぞれ手に携えた剣で茨に挑んでいきました。

しかし、いくら切り開いても茨は行く手を遮り姫の部屋へ近づくことができません。

そして息をつく間もなく次々と茨の鞭が襲い掛かり、打たれ、締められて一人、また一人と力尽き倒れていきました。

ついに、城の中には石になった人々と、累々と横たわる求婚者達の屍だけとなりました。


「哀れな。いくら想い人とて触れたこともない相手の為に命を捨てるとは。ふむ」


魔術師は、しばし考え込むと、杖を振り呪文を唱えました。
すると、血の溜まりの中に倒れている男たちの屍が茨へと姿を変えてもぞりもぞりと動きはじめました。




「姫への想いが同じであれば、倒れたものはひとつとなって想いを遂げればよかろう。そうでない者は石になるがよい」

そうつぶやくように言い残すと、魔術師はその場から姿を消しました。


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