駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて

こちらは怒りを露わにしているというのに、目の前の優也はご機嫌になっていく。


「なんで笑ってるのよ」


「そりゃ、別れたくないって聞こえたからだな」


「そんな事一言も言ってませんけど。耳大丈夫？」


「耳は問題ない。お前こそ人の話をちゃんと最後まで聞け。俺は契約は解消だと言ったんだ。それが別れるような話になるんだ？」


「だ、だって契約が解消するって事は私達の関係も終わりって事じゃないの？」


「あぁ、そうだな。終わりだ」


きっぱりと言い切る声に、止まっていた涙が溢れ止まらない。


「なに泣いてんだ？嬉し涙か？違うな…さっきから何か勘違いしてるだろう、お前」


頬を伝う涙を彼の両手が左右拭っていく。


そして、少し屈んで私の泣き顔を堪能するようにジッと見つめていた。


その間、私の頭の中は彼の『勘違い⁇』に⁇マークが飛び交っている。


「…好きだよ。契約を解消してちゃんと俺の女になってくれ」


突然の告白に、体の力が抜け頬を掴む彼の手から滑るようにそのまま床にお尻をついていた。


…うそ…聞き間違い⁇


彼もしゃがみこみ、にこやかに笑っている。


「りいさは言ってくれないのか？」