シンさんは愛妻家
僕が住むマンションに着くと、
窓に張り付いて高いタワーマンションを見上げ、口を開けている。

駐車場に車を入れ、
彼女の腰に手を当てて支えながらエントランスを通り抜け、
エレベーターにカードキーをかざしてガラス張りのエレベーターにに乗り込む。

「お医者さんって…お金持ちなんですね」

と窓から見える景色を見ながらポツリと言う。

「うん。まあ、家族もいないしね。
住むところは背の高いビルに住みたかったんだ。
窓の外から見る夜景が星空みたいだなって…
子どもの頃に思ったから…」

「…先生は…夢を叶えたんですね…」

「君には夢がある?」

「…ぬいぐるみ作家になること」

「ふうん。ベッドに置いてあった猫のぬいぐるみは君の作品?」

「…作品だなんて…手づくりです。
ネットの手づくりのサイトで売っているんです。
時々、注文もありますけど…趣味のようなものです。」

と彼女は小さな声でポツポツ話す。


「うん。好きだなって思ったよ」

「ありがとうございます」と勢いよく頭を下げると、フラフラと体が傾く。

うん。

「支えるのが大変だから、大人しくしててね」

僕がしかめつらで言うと、

はい。と小さな声で神妙な顔でうなづいた。

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