優しいスパイス
「なぁ、雪瀬」



綾月の声が、感情と冷静な分析を行き来する私を止めた。



いつの間にかうつ向けていた視線を上げる。



綾月を見ると、いつになく真剣な表情。



だけど、すぐにいつもの親しみのある無邪気な瞳に変わって、ニッと笑顔になった。



「来週の日曜、暇?」


「へ? うん」



突然の予想外な質問に、何も考えずに答える。



「息抜きに二人で遊園地行かね?」


「……え?」


「フリだけど一応彼氏だしデートな」


「デート!?」



思わず声を荒げると、綾月はニカッと笑って続けた。



「中三のとき乗れなかった観覧車、俺どうしても乗りてーんだよなぁ」







綾月はよく、本音か優しさかわからないようなことを言う。






ううん、わからなくなんてない。


こういう時、綾月の言葉はいつも優しさだ。






「雪瀬にとっても多少の気分転換にはなるだろ」


「……うん。そうだよね」



今回もまた。


私はその綾月の優しさに、甘えてしまった。

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