真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
後部座席のドアが開いて白いシートに浅く腰掛けた私はドライバーに行き先を告げると、それからは話しかけられないように、すぐさま横を向いて窓の外を見た。

イルミネーションに色づき始めた都会の街をスムーズに駆け抜けるタクシーは、私を刻一刻と彼のもとへと近づけて行く。いつもは会社から駅まで7分かけて歩く道をものの数十秒で追い越すと、そこから先の街並みは見慣れないビルやレストラン、カフェが軒を連ねていた。

目新しい景色の中でも一際目を引く、大きなガラス窓のカフェ。

”page(ペイジ)”

ーーあっ、ここ。よく雑誌で紹介されてる、お店だ......。

店内に暖色系の明かりが灯る人気のカフェは、アフター5のデートを楽しむカップルで賑わっていた。

平日デートなんて、したことないな......。

それどころか。休日ですら、朝から広務さんと一緒に居れたことなんてほとんどない。

仕事が忙しい彼にとって休日出勤は当たり前。

もし、ゆっくり休める日があったなら、彼はどこに行って何をするんだろうーー?

彼の好きな場所や行きつけのお店、好きな映画、好きなお酒、好きな音楽.......。

分からない......。

彼に会いたくて。私が今こうして彼のマンションへと向かっているのは、他に広務さんの居場所で思い当たるところがないから。

ーー私、彼のこと、何にも知らないんだ......。

窓越しに映える楽しそうなカップル達の笑顔を横目で追いながら、私は重ねた自分の両手に力を込めた。

そういうふうにしないと、ふつふつと沸き上がる他のカップルへの嫉妬心で胸がどうしようもなく、ざわついて取り乱しそうだった。

身を硬くして胸の中に閉じ込めた想いを、それでも逢う魔が時は意地悪にかき乱していく。

窓側の席に座るカップルの中でも、特別に目立つ一組の男女。

茶色いロングヘアーを緩くカールさせ、対面に座る彼にニッコリと微笑む彼女のスタイルが良いことは、座っていてもよく分かった。

そんな華やかな美人と、共に過ごしている男性ーー。

焦げ茶色のストレートヘアにワックスで動きをつけて、ナチュラルなのに、とても洗練された印象を感じる。

広い肩幅からは彼が背の高い男性であることを、うかがい知ることができる。

それから、顔立ちはーー......。

「......っ!! すみませんっ、やっぱり降りますっ......!! 止めてくださいっ!!」

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