真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「うっ、うん」

必死に動揺を隠そうとするも基本的に嘘が下手な私はジークのいかにも核心に迫るような話の切り出し方に、かなりぎこちない反応を見せてしまった。

やっぱり、見えてたんだ......妊娠検査薬。

私は尋問される覚悟を決めて、機械のように凝り固まった首を彼の方へ向けた。

「さっき、どうして優花は、あんな場所に独りでいたの?」

ーーはぁっ......、妊娠検査薬のことじゃなかった。良かった。

......良かった?

いや、良くない。

ジークは、お腹の赤ちゃんのパパだ。だから、いずれきちんと話をしなければいけない。

妊娠を告げたら、果たしてジークは受け入れてくれるだろうか?

張本人を前にしても所詮、意気地のない私は目の前に見据えたジークの透き通るようなスカイブルーの瞳を暗い車内で必死に覗き込みながら、彼の真意を掴もうと頭の中で暗中模索を繰り返した。

現状こうして、ジークは夜の街に独りでいた私を心配してくれている。

妊娠を告げても、きっと突き放すようなことなんてーー。

ーーそう、広務さんのように無言で突き放すことなんか......。

さっき私が夜の街に独りでいた理由。それは広務さんから私への言葉のない別れの仕草を見てしまったから......。

「私、独りぼっちになっちゃった......」

不意に数時間前に見た悲しい場面が頭の中に蘇り、理性を超えた感情となって口元からこぼれた。

「優花は、独りぼっちじゃないよ。どうして? アイツと喧嘩した? だから、さっき。あんなに寒いところに独りで居たんだね......。オレのせい?だよね......。オレが今朝、アイツに突っかかったから。でも、ごめん。オレ、そのこと全然悪いと思ってない。優花はアイツと絶対に別れた方がいい」

ジークはそう言うと、それまで深く運転席に座っていた身体を急ぎ起こして助手席の方へと身を乗り出し、感情を抑制しようと固く握りしめている私の拳を大きな手のひらで包み込んだ。

ジークの手のひらの温かさが、氷のように冷たい、しこりとなって心に埋もれていた悲しみを溶かして涙に変えていく。

「彼が......っ、広務さんが、他の女(ひと)と会ってた.......っ、私以外の女(ひと)に、優しく笑いかけてた......っ」

涙とともに次々と悲しみが溢れ出した。

どうして?

どうして、広務さんは他の女(ひと)と会っていたの?

その女(ひと)は誰なの?

なぜ彼女へ恋人に見せるような笑顔を向けていたの?

ーー私よりも、彼女のことを愛してるの......?

「......っ、うっ......、ううっ......」

人目をはばからず涙にくれる。たとえ今、自分の目の前にいる男(ひと)がジークだとしても、胸に宿るのは到底断ち切れない広務さんへの想いだ。

目の前で自分以外の男のために涙を流す私をジークは必死に慰めようとして、頭を優しく撫で続けてくれた。

「辛い場面を見たんだね。今も辛いと思うけど......。大丈夫、その傷は全部オレが引き受けるから。だから、優花。アイツとは今すぐ別れて、これからはずっと、オレの傍にいて欲しい。......お腹の子と一緒に」

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