真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
少し間抜けな、あの演出が絶大な効果を発揮してくれたおかげで。今日最初に彼女と会った時に感じた、所々靄が立ち込めているような不安定な心情は、すっかり解消されて、今は俺と優花の気持ちが、しっかりと繋がっていることを実感できている。

プロポーズするタイミングは今だーー。

フレンチのフルコースが終わり、デセールを運んでもいいか、ギャルソンが俺達の席に伺いを立てに来た。

「デセールをお持ちしても宜しいでしょうか?」

「お願いします」

ギャルソンを見上げて、アイコンタクトを送る。俺の意図を受け取ったギャルソンは、「かしこまりました」そう言って、穏やかに微笑んで店の奥へと姿を消した。

それから、暫くして彼が運んできたものは......、メッセージプレート付きのアニバーサリーケーキーー。

メッセージプレートの部分が彼女に見えないように細心の注意を払い、ギャルソンがケーキをテーブルに置く。

「今日はね、店に頼んで特別なスイーツを用意してもらったんだ」

「3ヶ月ぶりの帰国だもんね......。本当は私が広務さんの無事の帰国を、お祝いしなきゃいけないのに......」

まさかの今日二度目。それまで朗らかだった彼女の表情が瞬時に翳った。俺は自分の不用意な言い回しで彼女に誤解を与えてしまったことを心の中で厳しく罰しながら、なんとか場を立て直そうと、テーブルに無防備に置かれている彼女の右手を強く握った。

「俺は優花に何かしてもらいたいなんて、思ったことないよ。むしろ、俺が優花にしてあげたい事が、たくさんある。恋人としてできる事はもちろんだけど、それだけじゃ足りなくて......もっと近くで、優花を守りたい」

「広務さん......」

「これ、俺の気持ち。このメッセージ、受け取って欲しい......」

ケーキを半回転させて、メッセージプレートを彼女の方へと向けた。

”結婚してください”

今ばかりは。彼女の表情から心情を察するのは、とても難しい。感激してくれているのか、それとも只々驚愕しているのかーー今にも泣き出しそうな顔をしている。

俺は手をあげて、ギャルソンを呼んだ。深紅のバラの花束なら、きっと優花を笑顔にしてくれるはずだ。

「俺達、付き合って半年になるよね......」

「うん......」

眉頭に力を入れて上目づかいで俺を見据える彼女に大輪のバラの花を差し出しながら、俺は人生で、ただの一度きりの、この瞬間に想いの全てを捧げた。

「優花、俺と結婚してください」

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