真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
昼休みに入っても私から広務さんへ送ったLINEが既読になることはなく、とうとう未読のまま終業時間を迎えた。

LINEが一向に既読にならないことに内心不安を募らせながらも、実に自然に課への退勤の挨拶を済ませる。

「お先に失礼します」

頭よりも口が覚えている。就業時間とセットになった、お茶汲みOL定番のこの言葉。

こんな何の取り柄もない、お茶汲みOLにプロポーズしてくれたのは、数多の女性が憧れるハイスペックな男性。彼と私は到底釣り合わない.......。

それなのに、広務さんは私を生涯の伴侶に選んだ。

それには、大きなカラクリがあった......。

帰りの電車の中、この結婚の理由を考えながら未だ既読にならないLINEを何度も見つめて深いため息をついた。

朝の通勤ラッシュとは違って、まばらに席が空いている車内は物思いにふけるに丁度いい静けさを保っていた。程よい揺れと相まって少しだけ、うとうとしかけた時、

「次は中央町、中央町です」

車掌の低い声で目が冴えた。

やがて電車が停まり駅に降り立った私は往来に紛れながら再びスマホを確認した。

既読になってない.......。

やっぱり、忙しくてLINE見れないのかな??

ここで立ち止まって考えていても仕方がない。とにかく一度、家に帰らなきゃ......。

私はスマホをカバンにしまい、徒歩10分足らずの自宅マンションまでの道のりを目指した。

まだ早い時間帯にもかかわらず、冬の道はすっかり暗くなっていて、街頭に軒を連ねる雑貨店やカフェの灯りが映えていた。その煌びやかな灯りを受けながら歩いていると、不意にフラッシュバックしてきた光景に恐怖心を煽られた。

いつの時か.......、広務さんは私とは比べものにならない綺麗な女の人と、カフェで一緒に居た。

ジークが言ってた。”成瀬にとって結婚は出世の道具にすぎない。女なら外でいくらでも作れる”

きっと、そうだ......。本当は、あの女性(ひと)が広務さんの恋人なんだ......。

気がつくと私は駆け出していた。冷たい北風が舞う寂しい街路から早く逃れたかった。

私は道行く人の視線を尻目に息を切らせながら、自宅マンションのエントランスに滑り込んだ。

そして崩れるように前屈して、肩で息をしていると真後ろから聞きなれた声がした。

「優花っ、大丈夫!?」

「っ......広務さんっ!」

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