冷たい情熱を注いで。
 「もしもし?湊?仕事終わった??」
 「ああ。」
 ーー 午後8時、今日も私から電話をかけた・・・。
 相変わらず、二言で返される。
  
 「ご飯食べに行かない?」
 「ああ。」
 二言返事でも、会ってくれるのなら私は嬉しい。
 駅前で待ち合わせして、ダイニングバーに行った。

 テーブルには座らずに、カウンターに向かう湊。
 彼は、私の方を向いてくれない・・・。
 私はずっと湊の方を向いて話をしていた。
 それを彼は、ずっと横を向いて、ただ聞いていた。
 彼が私を見つめてくれる日なんて来るのだろうか・・・?

 今日はバレンタインデー。一年に一度、女の子から告白してもいい日。
 
 ーー 帰り道に寄った、夜の公園で私は・・・、
 「私・・・っ、湊のことが好き過ぎて、このまま独りで燃え続けてると、いつか灰になっちゃう!だから・・・私の彼氏になって、クールダウンしてっっ!」
 「・・・ああ。」
 ーー OKって、こと・・・!?
 でも、ちゃんとした言葉で答えて欲しい ーー。
 「”ああ”しか言えないのっ!?」
 「ああ・・・。そうだよ。俺、”あ”から始まる言葉しか言えないんだよね。」
 そう言って湊は私に笑顔を向けた ーー。

 「ありがとう。亜希、愛してるよ・・・。」
 
 湊の瞳の中に私が映っている。
 湊の瞳が私に近づいてくる・・・。
 湊の瞳の中の私は次第に大きくなって、見えなくなった ーー。
 
 ・・・あっ・・・。

 湊の冷たい情熱が今、注がれた。
 
 ーー 私の唇へ・・・。
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