終わりで始まる進化論~第一部~

「私たちは以前政府から、一つのシェルズ・コアを託されました。原因を調べて欲しいと。解体を試みようとも思いましたが、我々はシェルズ・コアの経過観察実験と称しそれを記録し続けたのです。


すると、シェルズ・コアは一定の時間を経過するとその殻を破り、自ら戻ってくるのです。


ですが、シェルズ・コアの中で過ごした人間は何らかの能力を身に付けているのです。そして、以前の記憶を無くしていました。症例の人間は、もはやヒトと言える生物ではありませんでした。



新しい能力を身に付けた生物、我々は第二形態人種(セカンドタイプ)と呼んでいます。人体の能力より更に高い能力を身に付けている生物……いわゆる、進化です」




「進化……?!」




「はい。人は知能という絶対的な武器を持って食物連鎖の頂点に君臨(くんりん)してきました。ですが、セカンドタイプがこの世界に拡散されれば、食物連鎖のピラミッドは崩れ、私達も生態系弱者になる恐れがある。政府はそれを恐れ、早急に手を打とうと考えました。シェルズ・コアの破壊です。無抵抗の内に駆除すれば、ヒトが襲われる事はありませんからね」




ナツキは教室の惨劇を思い出していた。必死に助けを求めるクラスメイトに、情けもかける事もなく迷いもなく斬り捨てた剣士の少女。彼女は実行犯という事だろう。クラスメイトの命を奪った張本人だ。ナツキは拳を握りしめていた。






「多くの人間が生きるために、俺のクラスの皆は犠牲になったんですか!必死の救助の声も聞き入れて貰うことも許されずに!」




「……気の毒な方々です」




「……っ!」





シノミヤも同じ事を言っていた。あいつらは、運が悪かった。人の命は運で決まるのか?運がない人間は生きる資格も許されないのか?





「俺のクラスメイトは、あんた達の実験台じゃない!」





胸の中のつかえの原因がなんなのか、ぶつけ所の無い怒りに震える。ナツキは羽柴の部屋を飛び出していた。
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