捨てられなかった想いを、今
「この箱に手紙ないんすか?俺かもしれないし、名前は?」



ファンレターが入った箱を指さす。

そこには今日のイベントを楽しみにしてくれたファンの人達からのファンレターが詰まってる。



「塩尻優奈(しおじりゆな)」



そう彼女の名前を久しぶりに口にして、自分宛のBOXの中をみる。



「りょーかい」



康太もそう言って、俺と同じように康太宛のBOXに手を入れる。

面倒そうにしつつも、こうやってなんでも協力的だから本当にいいやつなんだよな。康太は。


でも、康太の方にファンレターが入っているのはなんだか悔しいので絶対に俺の方に入っててくれと願いながらBOXの中の封筒を調べていく。

箱のなかの手紙を1枚1枚確認しながら、さっきの塩尻さんの顔を思い浮かべる。


俺も彼女ももう25歳。
最後に会ったのは1年の終業式だから、もう10年も前だ。

彼女が俺を覚えてるのかどうかもわからない。

でも、なんの巡り合わせか。
今日こうして、俺らのイベントに足を運んでくれていた。

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