snow vallentain
「僕も立場上、自分の秘書に失恋するなんて格好悪いからね。」

「どういうこと、でしょうか?」

胸の鼓動が激しくなっていく。

「このチョコが君の社交辞令だとすると、僕は君に失恋することになる。なぜなら、」

エレベーターが1階で止まった。

「僕が君に恋していて、君からの意思でチョコをもらいたいと思っていたからだ。」

私は震える手でエレベーターの「閉」ボタンを押さえたまましばらく動けなかった。

「私の気持ちです。このチョコは私の社長への思いが詰まってます。」

そう言った後エレベーターは開いた。

冷たい風が吹き込む。

ビルの外に出ると雪がしんしんと降っていた。

「スノウバレンタインだな。」

手配した車が扉を開けて待っている。

社長に鞄を手渡したその瞬間、私の腕が強く掴まれ社長の胸に引き寄せられた。

「一緒に来ないか?君とバレンタインの夜を過したい。」

社長の美しい顔がいつもより近い。

その息づかいは熱っぽく私の胸に響いた。

「はい。」

私は社長の目を見つめて言った。

社長は微笑み頷くと、私の肩を抱いたまま車に乗り込んだ。

降り積もる雪を眺めながら、社長が静かにつぶやいた。

「明日から僕達の景色も変わるな。」



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