リライトリライト
 澤部さんという心強い味方を見つけて、普段も行きやすくはなったんだけど、やっぱり隆弘に会いたくて入会したようなもの…。
 そんな考えに、最初は新しい恋を始めるつもりでここに来たのになと苦笑する。

 友達から始める……か。
 出来るかな……。

「お疲れ。
 何、ジムの前で百面相してるの?」

 やだ!隆弘!!

「朋花ちゃんってクールな感じかと思ってたけど、意外だね。」

 黙っていると冷たく見られるみたいで、だから親しげに話してきてくれる人は嬉しかった。
 最初は土屋さんっていったインストラクターの人もいい人かなって思ったんだけど。

 ジムに足を向けようとしていた隆弘が足を止めて振り返った。

「余計なお世話かもしれないけどさ。
 土屋っていうインストラクターの人は注意してね。」

 再びお母さんみたいな心配の仕方と、澤部さんと同じ指摘に吹き出しそうになる。

「隆弘くんまで。」

「俺までって他にも注意してくれる人がいたの?」

「澤部さんっていう女性のスタッフの人。」

「あぁ。あの人もインストラクターだよ。」

「そうなんだ。すっごく小柄で可愛らしい人だからてっきりスタッフの人かと。」

「ヨガとかスタジオに入ると別人だよ。
 キレッキレの体してるから。」

 人は見かけによらないなぁ。
 ジムのビルに入るとちょうどフロントに噂をしていた澤部さんがいた。

 澤部さんは私に気づいて笑顔を向けてくれた。

 可愛い。未紗がポメラニアンなら、澤部さんは柴犬かな。
 子犬のさ。可愛らしい日本犬。
 黒髪が豆柴って感じ。

「あ、黒谷さん。と、それと……。」

「藤田です。」

「はい。すみません。藤田さん。
 どうぞ。しっかり汗を流していってくださいね。」

 更衣室に向かいながら朋花にしか聞こえない声でつぶやいた隆弘の声に笑う。

「俺の方が長いこと通ってるのに落ち込むわー。」

「ふふっ。彼女、土屋さんから女性を守ることに意欲を燃やしてるのよ。」

「ま、それは有り難いことだな。
 朋花ちゃんにとっては。」




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