リライトリライト
　しばらくして未紗が申し訳なさそうに口を開いた。

「ごめんなさい。
　私、もう今日は帰らないと田舎から母が来てて本当にすみません。
　見送りに行かないと寂しがるので。」

「なんだ。お母さん来てたならわざわざ休日出勤に付き合わなくても……。」

「佐野主任に任せておくと事務処理が余計にとっ散らかって後から倍時間がかかるんです！」

　佐野主任の気遣いも未紗に言い負かされてぐうの音も出ない顔になった。
　こちらが笑えてしまうほどにいいコンビだ。

　未紗も責任感強いからな。

「いいわよ。あとは私が手伝うわ。」

「あー黒谷先輩、やっぱり女神です。」

　パタパタと駆けていった未紗が振り返って「失礼します！」と言ってまた駆けていった。
　その姿に頬を緩める。

「悪いな。休みの日に。
　休日出勤の届け出してないだろ？」

　佐野主任は可愛いヘアクリップをまだつけたまま真面目な顔で話しかけてくる。
　そのギャプから笑いそうになるのを堪えて返答した。

「いいですよ。
　私の分は未紗につけてあげてください。
　いつも頑張ってて私も助かってるので。」

「そうか。悪いな。」

　そこからは佐野主任も残りの仕事に集中した。

　久しぶりに見る佐野主任の真剣な表情。
　いつもは憎まれ口くらいしか会話がなくて、仕事が出来て実はかっこいいんだということをつい忘れる。

　顔立ちがはっきりした彫りの深い顔で、黙っていればかっこいいと思う。
　短髪が伸びてしまった長い前髪だって本人に言えば切りに行く暇がないだけ、と言うだろうけど、それさえも似合っている。

　本当、なんで結婚しないんだろうな。
　彼女くらい居そうだけど。
　……２、３人いたりしてね。





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