【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜

都心の高級住宅地の中心部に建てられた、一際目立つタワーマンション。

その高層階にある、俺の部屋。
車は地下駐車場に停めるようになっていて、地下からそのまま此処まで上って来てしまった彼女は、当初自分が何処にいるかが全く理解出来てなくて。


「うわぁ………」


寝落ちてしまった次の朝、窓に引かれた分厚い遮光カーテンを、自らの手で開けるまでその感嘆の声を聞く事がなかったんだ。


「瑛飛さんて、ほんとに不思議です」

「なんで?」

「なんでも持ってる筈なのに、凄く寂しそうに笑うから…」

「……そ?」

「…はい」


気付けば、彼女は半分夢の中。
俺の胸の辺り顔を埋めて、うつらうつらとしている。


「……本当に欲しい物が、手に入ってない、からな…」


その言葉は彼女にはもう届いていなかった。

それは静かな寝息で、よく分かった…。


これからが、勝負所だな。


まだ、彼女の中には燻っている思いがある筈だから。


作戦を今更変えるつもりはない。
じっくりゆっくり、甘く優しく。

それが、もしも彼女の駄目にする事になろうとも。

俺は、彼女が自分からしっかり俺を求めて来るまで…待つつもりだ。


理性を固めて。
その辺はもう、覚悟を決めて。

勿論、その為に必要なスキンシップは貰うけど。
俺は、それ以上の無理強いはしない。

その辺の男との違いを、きっちり見せ付けてやるから。

彼女の呼吸がし易いように、身動いて俺は片手を自分の枕にした。


「全部、溶かして…必ず俺のものになれ…よ?」

「……ん」


背中を撫でると、彼女は満足そうにすぅっと寝息を立てた。

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