瞬くたびに
面影
要と話したあの公園で二人は待ち合わせた。

現地集合は困るからと、結々が設定したのだ。

近くの停留所からバスに乗り込んで三十分ほど揺られれば、目的地はバスを降りてすぐだった。

「ここに来るのも久しぶりだな」

「そうなんですか?」

「最後に来たのが中学二年の時だったから一昨年、いや、六年も前になるのか」

よく晴れた日曜日、二人が来ているのは町はずれにある水族館だった。

葵のアルバムに挟んである思い出の、最初のページに写っていたのがこの水族館だったのだ。

水色で塗られたその建物へと歩きだした途端、葵ははっとした顔をして言った。

「それとも、本当は久しぶりじゃないの? 鈴本さんと来たことがあったりする?」

「いいえ、私がここに来るのは初めてです。なかなか来る機会がなくて」

「そっか」

チケットを買ってゲートをくぐる。

その先にあったのは想像よりも広々とした内装で、二人は同時に声を上げた。

「うわあ、すごい。迫力がありますね」

「前に来た時よりずっと綺麗になってる」

目の前にそびえる水槽を見上げて葵が言う。

青白い色の底に立つ二人に、頭上をゆったりと泳ぐ魚たちの影がいくつも重なってゆく。

「綺麗ですね」

「うん」

そっと葵に目をやると彼もまた目の前の光景に目を奪われていた。

けれどその表情は、やはりどこか憂いを含んでいる。

きっと六年前の葵は、今と同じようにここで水槽を見上げながら無邪気に笑っていたのだろう。

隣に立つ晴那に、綺麗だねと言いながら。

「先輩。先輩のここでの思い出、聞かせてください」
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