瞬くたびに
二人で見た色を
青空はだんだんとくすんだ色を見せ、夕暮れの気配を感じさせていた。

砂浜から一段高い補正された道の上、海が一望できるベンチに、ゆったりと深く腰掛ける。

「海、きれいですね」

二人の間に、落ち着いた空気が流れる。

「鈴本さん、ごめん。俺……」

葵が言えば、結々はゆっくりと首を横に振った。

泣き腫らした目が痛々しい。

「謝らないでください……」

結々は息をついて背もたれに体を預ける。

冷たさを増した風が熱くなった体に心地いい。

感情を出しきった後の、ぼんやりとした気怠さが重りのようにのしかかっていた。

「鈴本さん、あのね」

葵が静かに結々の名を呼ぶ。

「俺はやっぱり晴那が恋しい。忘れられなくて、出来ることならあの頃に帰りたいって思ってる」

結々はうつむいて、小さく頷く。

「四年後の、大学生の俺がどういう気持ちでいたのか、今の俺にはわからないけれど……俺はどうしても、晴那を忘れられない。……晴那が好きだ、誰よりも。これが今の俺の気持ち」

そしてまたごめん、と言う。

結々は噛みしめるようにその言葉を心の中で反芻した。

どちらも、何も話さない。

長い沈黙の後で、結々が口を開いた。

「忘れる必要なんてないです」

葵が驚いたように結々を見つめる。

「忘れる必要なんて、ないじゃないですか。忘れなくていいんです。晴那さんを好きというのが先輩の気持ちなら、そのままでいいんです」

葵は黙って結々の言葉に耳を傾けていた。

彼女の目からは、さっき泣いていた時のような脆さは消えている。
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