セルロイド・ラヴァ‘S
「睦月はお姉さんでしょう」と姉妹がいるのも言い当てられて、自分には鬱陶しいくらい当たり前すぎる家族の存在が彼にはもう無いのだと。胸に刺さる。

悲しみが大きい人ほど優しい。・・・そんな風に聴いたことがあった。笑って何でもないことのように言えるのは彼の芯の強さだろうか。何だかとても深い人に思えて。私の腕じゃこのひとを抱えきれないんじゃないかって・・・心許なさに揺れた。

静かに私を見つめる眼差しを外せずに。愁一さんが顔を寄せてきたのを目を閉じて。キスを受け止める。唇で口を開けと優しく命令され、差し込まれた舌に中を好きにされ。そのまま仰向けにソファに倒された。

下着の内側に滑り込んできた指に弱いところを探られて、声が漏れ出ると。後はもう割りと容赦がない。下だけ服を取り払われて、露わにされた素肌が彼の触手に侵される。身悶えるごとにきつく追い詰められる。脳髄が溶かされる。
  
「・・・睦月・・・っっ」

愁一さんの切羽詰まった低い呻きを頭上で聴きながら。覆いかぶさる彼の下で突き上げられる衝撃を受け止める。

殺しきれない声を切れ切れに上げ。最後の激しさを受け止めきって私も力無く沈み込んだ。




「ごめん・・・。夜まで我慢できなくて」

私の短い髪を梳くように撫で、愁一さんが済まなそうに笑んだ気配。

二人でソファに横たわり、私だけ乱れた姿のまま彼の胸に抱き寄せられていた。

「・・・平気」

全身の力を一気に使うから終わった後の気怠さはその反動。時間が経てばそれほどじゃなくなる。

「本当はね、僕はすごく我が儘なんだよ。睦月と逢った時からすぐに君が欲しくなった。今も・・・もっと滅茶苦茶に抱きたくて仕方ない」

自嘲の響きを掠めて聴こえた声。顔を上げようとしたのに胸元から離してはもらえない。

「睦月が戸惑ってるのも分かってる。たったの2回目で・・・って思うかも知れないね。でも僕は」

頭の天辺に彼の熱い吐息が埋まる。

「真剣に君を想ってるよ。これから時間をかけてちゃんと証明してくつもりだから。・・・心配しないで睦月」
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