くるみさんの不運な一日
声を掛けるべきか迷った。


声を掛けるにしてもどう言えばいいのか分からなかった。


あたしの所為?って言うのも違う気がした。


別にあたしは手伝ってって頼んでない。


でも手伝ってくれたのは事実で、だから思ったよりも作業が捗《はかど》って――。


やっぱり何を言えばいいのか分からない。


だから見なかった事にして、このまま帰った方がいいと思った。


明日、一言「昨日はありがとうございました」とお礼を言えばいいかと思った。


――けど。


「……水戸さん?」

「な、何してるんですか!?」

見つかったからには無視する事も出来なくて、「営業課」のドアを大きく開けたあたしは、ズカズカと中に入っていった。
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