酒は飲んでも呑まれるなかれ 夫婦のバレンタイン
奥様はツンを卒業する
今日は夫婦になって初めてのバレンタイン。

私はまだ産休中だ。
年末前に産まれた我が子はまだまだ、手が掛かるけれど今は寝てくれる時期。
そして産まれた千和はよく寝る子だった。
これなら作れる!
そう思った私は先週お散歩がてらスーパーに行き、チョコレート菓子を作る為に材料を買って隠しておいた。

「ふふん、お菓子作りは得意なんだからね!あっと驚かせてやるんだから!」

そう意気込んで作り出すも、今日は泣く日なのかちょこちょこ泣く千和に止められながら、何とか作り終えたガトーショコラ。
冷蔵庫で冷やして、そのまますぐ夕飯作りやらミルクやらお風呂やらとバタバタと過ごした。

寝かし付けながら、一緒にうとうとしていた頃。
カチャンという玄関からの音で目が覚めた。

寝室から慌てて出て、出迎える。

「おかえりなさい!お疲れ様」

そう言って出迎えると、職場では考えられない笑顔を浮かべて

「ただいま、千波。千和はもう寝たか」

少し残念そうに言う和臣さんは、毎年沢山のバレンタインチョコを貰う。
帰りは紙袋いっぱいのチョコと言うのが定番だったのに。
今日はビジネスバッグだけだ。
私の驚いた顔で考えを読んだ和臣さんは少しムッとしつつ答えてくれた。

「俺には千波も千和も居るのに義理も本命も受け取るわけないだろう?しかも会社のデスクには隠さず千波と和希の写真飾ってるのに」

発言にびっくりしたのは言うまでもない。
まさか私と千和
の写真をデスクに飾るとは思わなかったのだ。
あの鋼のサイボーグと呼ばれた仕事の鬼も変わるものだ。

すると、ニコニコとしながら聞いてきた

「だって、千波は俺に作ってくれてるでしょ?」

何故バレてる?!と思いつつも素直に夕飯と一緒に冷蔵庫からガトーショコラを出した。

「もちろん、用意してるわ。夫婦になっての初めてバレンタインだもの。」

そうして出したビターチョコのガトーショコラを和臣さんは美味しそうに食べてくれた。

「千波、いつもありがとう。愛してるよ」

そう言って和臣さんが出してくれたのはブリザーブドフラワーを入れたフラワーボックス。
そこには私の好きなバラとマーガレットかすみ草などが綺麗に入っていた。

「綺麗。和臣さん、ありがとう!私も愛してるわ」

デートにも行けないけれど、暖かな家で、温かい気持ちで過ごせたバレンタインになった。

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