桜吹雪の中で


「演劇部は3年が10人、2年が8人、1年が20人なんだー」

「え、1年生多くないですか?」

「あー、それは多分中村が呼び込み頑張ったからね
あ、去年の話聞いた?」

「卒業生がやる気なかったって話ですか?」

「それもなんだけど…」


そう言いかけて薫さんは3つの扉が等間隔に並んでる部室の前まで連れてきてくれた。

「ここは部室。
左から1年、2年、3年なんだけど



今は2年、1年、3年なんだ」

薫さんは少し寂しそうな顔をした。

そして話を続けてくれた。


「去年の1年生、今の2年ね。
本当はもっとたくさんいたんだよ。

んで、中学から役者やってたり地元の劇団入ってた子達が例年よりたくさんいたんだ。

コーチも気合い入れて張り切ってたんだけどね

去年の先輩ちがさ、ほんとにやる気なくて適当にしてたせいでやる気あった1年生がね…」


薫さんが現・2年の部屋を開けた。


「みんな部活どころか高校も辞めてったの。
でもね、黒板見てくれる?」


私は入って右側の黒板を見た。


大きく全国大会優勝と書かれ
みんなの目標、これからどうしていけばいいかの作戦会議のあとたくさんの板書の後で埋め尽くされていた。


「1年生は諦めてなかった。
毎日、毎日考えて黒板に全て書いてた。でもね、先輩たちが言ってしまったの。」

「なんて言ったんですか?」

「『今年の大会の演劇は力を抜いて作る』って

まぁ、たくさん考えてた1年にとっては逆らえない先輩たちの言葉に対抗もできなくて
コーチと一緒に小さな劇団を作ったの。

今はどうなってるか知らないけど
演劇部はコーチも優秀な人材も失ってしまったの


翼はね、その時脚本の才能を見出して
演劇部に残ってみんなの意思を無駄にせず中村と二人で少しずつ立て直してくれたんだよ。私はサポートしか出来なかったけど、今の2、3年は中村と翼には感謝してるんだ。」


演劇部の苦労をしって
浮かれ気分ではいけないって思った。



恋とかそーゆーのも楽しいけど


私は何より
二人の役に立ちたいと思った。



「まぁ、湿っぽいのは置いといて
そろそろステージ戻ろう!

中村に怒られちゃう!!」


私たちはステージに戻った。

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