桜吹雪の中で


練習は小道具なしで始まった。


朗読だけでは分からなかったが
言葉は感情ひとつで感じ方が大きく違う。


小野くんと中村先輩、二人が監督で練習が進んでいった。



「もっと、かなしく!」

「ここで上を向いて!」

「ここは戸惑うシーンなので、目を少し泳がせてみてください。」

「今のところ歯を食いしばってもいいかもしれません。」

二人のアドバイスを活かそうと、役者さんたちは必死だった。


100近くあるシーンのワンシーンだけを
何度も何度も繰り返していた。

そのシーンのメインじゃない人も
自分のことのように真剣に見ていた。



「ここのシーンでなにか思った事ありますか?
」

小野くんにそう聞かれて
言葉が詰まってしまった。


自分がいかに甘い考えでここにいるのか。

私が答えてその答えが
役者さん達にとって重要なものになるのだと
今更気付き、何も言えず下を向いてしまった。


「小川さん、ゆっくりでいい。何でもいい。
感想でもいい、一言でもいい。アドバイスじゃなくても見て思ったことそのままでいいよ。」

中村先輩の優しさから
また、自分の甘さを痛感した。


「私は…」

部員のみんなを見て

台本を読んだ時のことを思い出した。



読んだ時と同じ感情。いや、少し違う。
自分の決意もある。

だから、思ったままに言った



「感動しました。
私、皆さんと一緒に素敵な作品作りたいです!!!」



「菜美さん、


ありがとうございます。」


周りを見ると部員の人が笑顔で私を見ていた。




「よし、次のシーンいくぞ!」

中村先輩の掛け声とともに
役者さんが動き出した。


次はもっとうまく言おう。


そう思った。
< 28 / 84 >

この作品をシェア

pagetop