桜吹雪の中で


「恋を知り、愛を知り…
己の欲深さを痛感する。

そんなこと俺は分かっていたのに。

あぁ、神よ
僕にもう少し勇気があれば…」


中村先輩が1人ステージに立ち、スポットライトがあたり
劇がスタートした。



ずっと、見ていたはずなのに

ずっと、アドバイスしていたはずなのに

最初から感動しっぱなしだった。



部員の輝く姿を見て、いろんな感情が込み上げてきた。





そろそろ、小野くんと中村先輩のシーン

「あ!あれ小野くん?!」

結子が隣で小声で聞いてきた。

「そーだよ!前髪あげ…て…」

返事をしながら舞台の上の小野くんを見た。




小野くん?

初めてちゃんと見た。
小野くんの顔。

どうして、もっと早く前髪を上げてくれなかったの?…



小野くん、あなたは…


涙が溢れた。

これは嬉し涙。きっとそう。


ずっと、2人に恋してたと思ってた。
あなただけなんだね。


桜吹雪の先にいた人は
小野くんだったんだね…





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