チョコレートを一滴
「そっか……バレンタイン……」

「チョコレート、一滴でいいよ。いつものコーヒーに」

くっきりとした二重の瞳が優しく緩むと、それだけで日葵はぼうっとなってしまう。

「それとも君のチョコレートは俺にはもらえない?」

「いえ……一条さんは私のことなんて相手にしてないと思ってたから、諦めてました」

「それって日葵ちゃんからの告白だって受け取っていいのかな? 俺、君に会う為にここの店に通ってたんだけど。気づかなかった?」

「え……確かに運転手付きでカフェに来るって変だなあとは思ったんですけど」

本当はバレンタインに告白しようなんて考えてなかったわけじゃない。
だけど自分にはそんな勇気ないからと、チョコレートは用意できてなかった。

「一条さん車運転しないですよね? 実はチョコレートリキュールならあるんです。とっておきのホットチョココーヒー作るので、飲んでもらえますか?」

「いいけど、メニューにないならお店では出せないよね? この後プライベートで出してもらってもいいってことかな」

突然の誘いに日葵の頬が色づく。彼が満足そうに微笑んだ。


「お返しはとっておきの甘いのあげるから。楽しみにしていてね」






*fin*
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