お前の唇、奪っていい?


「おと、さ...お父さん!!!」




通り魔が舞に刃先を向けた瞬間、舞のお父さんがふたりの間に入り、
包丁はおじさんの腹部を貫いた




返り血を全身に浴びた舞は、そんな事を気にせずに、
まじまじとおじさんの悲惨な状況を眺めている




俺は、何も出来なかった


驚きと絶望で、体が全く動かなかったんだ




「だいじょ、ぶか...舞...」


「お父さんっ、死なないで!お父さん!!」




数分後、警察が犯人を捕まえ、何台もの救急車が到着したが、
その時には既におじさんは息絶えていた




舞は、いつまでもおじさんのそばに寄り添っていた




俺はあの時、何も出来なかった


だからこれから俺がずっと、舞を守るって誓ったんだ




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