私の愛しいポリアンナ




「なんだ」

「もうめんどくさいんで、私ここに住んでもいいですか?」

そうすれば設楽さんが勧めてくれる見合い相手に会うの楽ですし。
終電も気にしなくていいし。
そう、なんとも間抜けな顔で言い切った。
あんた、なんかタツヤに似てきたな、とは言わなかった。

酔いがさめていれば、みのりの発言に「頭が沸いてるな」でバッサリ断れたのだ。
しかしその時の秋は二日酔いの気持ち悪さと頭痛との戦いに脳の大部分のリソースを割いており、まともな判断ができなかった。
「トマトとシソもちゃんと収穫しますから」なんて言っているみのりに対して、「それは助かるな」なんて思ってしまうほどに頭が沸いていたのだ。
だから、「いいぞ」なんていう、破滅の答えを返してしまった。

そのあと本調子ではない体をなんとか動かし、秋は仕事に行った。
打ち合わせは最高とは言えないものの、80点くらいの結果は出せた。
自分を褒めてやりたい。
体調も悪いので打ち合わせが終わったらすぐ会社をあとにした。
勤務時間は実質3時間ほどだっただろう。
そうして帰ってきた家では、みのりが勝手にチー鱈を食べながらテレビを見ていた。
やりたい放題じゃないか。
秋の口元が引きつる。
しかし、怒る気力もない。
なんだか昨日と今日で大変にエネルギーを使ってしまったようだ。
できればみのりにはさっさと出て行ってほしい。



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