初恋のクローバー


思えば最初から、私たちを繋いでくれていたのかもしれない。


彼と出会ったこと。


彼が私を知っていたこと。


私が彼に憧れたこと。


彼が私に憧れてくれたこと。


私が彼を好きになったこと。


彼が私を好きになってくれたこと。


彼が私を救ってくれたこと。


私が彼を救えたこと。


その全てが、「運命」なんていう言葉を信じてみたくなるような、奇跡の連続だった。


でもそんな奇跡が起きるきっかけになってくれたのは、全部あのお守りだった。


緑が綺麗に咲いた、一つ葉のクローバー。


たった1枚のその葉の中には、沢山の想いが込められている。


何度も、目の前にそびえ立つ困難に打ち勝ってきた。


彼に出会って、止まっていたはずの私の時間が動き出した。


彼と2人で、新しい未来を切り開いてきた。


彼に出会って、私は変わることができた。


嫌いになりかけていた自分を、またいいと思えるようになった。


静かにゆっくりと、けれど確かに進み始めた私の時間は、彼と混ざりあって「初恋」という気持ちを教えてくれた。


誰かを好きになることが、こんなにも自分に力を与えてくれる。


好きな人のそばで笑っていられることが、何よりも嬉しいと思う。


私に初めての気持ちを沢山くれた彼が今、私の隣で笑ってくれている。


それだけできっともう、私は自分の道を歩んでいける。


「和哉くん」


「なに?風結」


愛しい彼の名前を呼べば、当たり前のように振り向いてくれる。


それがどれだけ幸せなことなのかを思いながら。


「大好きだよっ!」


これからもずっと、君に初恋をしていけますように。


重なった2人の手の中に見えたあの一つ葉のクローバーに、私は密かにそう願うのだった。


END

< 113 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop