初恋のクローバー


「……ハァ……ハァ………、ッ…」


今、どれくらい走ったのだろう。


放課後のグラウンドは運動部の声が行き交っているはずなのに、酸素を取り込もうとする自分の呼吸音しか耳に入らない。


もうどれくらい、このままなのだろう。


広いグラウンドの隅で1人、合っているかもわからないフォームで走っている。


初めはいた他の部員は、次第にその姿を現さなくなっていった。


こんな状態が、あとどれくらい続くのだろう。


小さい頃から走るのが好きだった。


中学では陸上部に入ろうと決めていた。


だから、廃部寸前でも陸上部に入った。


いつかは変わるだろう。


いつかは部員も増えて、コーチもやってくる。


いつか、いつか、いつか。


でもそんな願いは叶うこともなく、気づけば引退も間近。


いつかなんて、なかったのかもしれない。

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