初恋のクローバー
「インターハイで風結が声をかけてくれた時、言ってくれたよね。俺の走りはあんなのじゃない、って」
「あ、うん……はは」
あの時の私、やっぱり失礼だったよね。
いきなり知らない人に自分の走り方をダメ出しされるなんて、私だったら絶対嫌だもん。
和哉くんは電話でそんなことない、って言ってくれたけど……。
申し訳なさから乾いた笑みを浮かべていれば、和哉くんはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「あの時、嬉しかったんだ。俺の走りを指摘してくれたことはもちろんだけど、それ以上に才能に見合う努力をしてる、って言ってくれたこと……本当に嬉しかった」
「和哉くん……」
「風結の言葉が、風結の存在が、いつも俺に力を与えてくれてた。風結はいつも、俺の前を走り続けてくれてたんだ」
「……っ」
そんな風に思っててくれたんだ……。
和哉くん………
「……風結のことが、好きです」
「っ!!」
予想もしていなかったその言葉に、急激に体温が上昇するのを感じた。
今までにないくらい、心臓がうるさく音を立てる。
走っている時よりもずっと、ドキドキしてる。
「部活で忙しいし、簡単には会えないかもしれない。でも、これからもずっと、俺のそばで笑っていて欲しい……俺と、付き合ってください」
「っ……はいっ!」
「………っ」
ギュッと、力強く抱きしめられた。
触れ合った部分から彼の想いが伝わってくるようで、私はその嬉しさにまた涙を流してしまう。
「好き……大好き、和哉くん」
「……俺も大好きだよ、風結」
自然と重なった彼の唇は、私の涙のせいで少ししょっぱい味がしたのだった。