初恋のクローバー
「……はい、どうぞ」
「っ、」
ドアの向こうから、久しく聞いていなかったあの声が聞こえてくる。
穏やかな、優しさを帯びたあの声。
それだけで、なぜか涙が出そうになった。
私は目尻を指の腹で拭ってから、ドアを静かに開ける。
「……和哉くん」
「え…?」
奥に歩みを進めれば、3度目に会う彼の姿が視界に入った。
「…!」
1ヶ月ぶりに見る、彼の姿。
少し痩せたように感じるその体は、ベッドにもたれかかって覇気を失っているようだ。
「……っ」
嬉しいような、苦しいような、色々な感情が混ぜ合わさって言い難い気持ちで胸がいっぱいになる。
「……………」
「……?和哉くん…?」
「……っ」
こっちを見上げて固まっている和哉くんを不思議に思って声をかければ、彼はビクッと肩を揺らして小さく笑った。
「はは……びっくりした。……どうして、ここに?」
「あ、うん。えっと……電話が、繋がらなかったから……色々、不安になっちゃって……」
重い女だって思われたかな。
怖くて和哉くんの顔が見れないや……。
「……そっか。ごめん……電話、出なくて」
「………うん」
心臓が、突き刺すような痛みを訴えた。
『ごめん……電話、出なくて』
出なかった。
出られなかったんじゃなくて、出なかった。
「………っ」
熱くなる目頭を手の甲で抑えて、どうにか出そうになる雫をこらえようとする。