包み愛~あなたの胸で眠らせて~
湊人の記憶は曖昧で、広海くんの名字が池永だとまでは覚えていなかった。そもそも、名字を知っていたかどうかも怪しい。

私は昨日会ったときから、さっき会った時までを話した。

ソフーに座った湊人は「んー」と腕組みをして、天井を見上げてから再び写真に視線を落とした。

「紗世ちゃんが言うように、広海くんだと思うね。同姓同名の別人とは考えにくいよね。俺が本人に聞いてみようか?」

「ううん、いいよ。自分で確認するから」

「だけどさ、広海くんだって紗世ちゃんの名前を聞いて、思い出したはずだよね? それなのに何も言わないのは、触れたくない過去だからとか」

「あー、そっか。そうなのかな……」

両親が離婚して、転校や引っ越しを余儀なくされてしまった彼はきっと悲しい思いをしている。

私でさえも、広海くんがいなくなった時は悲しかった。

広海くんは私以上に悲しかったに違いない。友だちとの別れだけでなく、お母さんやお兄さんとも別れた。

その時の彼の悲しみを思うと、私との再会を懐かしいなんて喜べないだろう。浅はかに確認するべきではないかもしれない。
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