不埒な先生のいびつな溺愛
先生の十二年間
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───受験が終わると、二人には別れが訪れた。

久遠隆之はK大に受かったが、秋原美和子はC女子大に落ちたのだ。

「はは、ダメだった」

美和子が彼にそう打ち明けたとき、彼の中では嵐のように考えが巡っていった。

第二志望の大学へ行くことに決めたという美和子。彼女を思いやる言葉など思い付かず、久遠は自分がどうしたいのかばかりを考えていた。

卒業しても、美和子と一緒にいたい。それが久遠の正直な気持ちであり、彼女と過ごしたこの一年で着実に積もっていった想いだった。

「そうか。なら俺も別に、K大に行かなくてもいい」

その言葉は、彼だけの中では熟考に熟考を重ねた上での結論だったのだが、その判断は美和子を怒らせた。

彼女は目に見えて不機嫌になり、久遠に背を向けてしまった。

「待って、なにそれ。私のこと慰めてるつもりで言ってるの?久遠くんはK大に行きなよ、受かったんだから。私だって、第二志望に受かって満足してるよ。いいじゃない、それで」

久遠にとっては良くなかった。

美和子の第二志望の大学は、東京から離れている。最初から彼女の近くにいるために、そして彼女が勧めてくれた大学だったからK大を選んだだけであり、美和子のそばにいることの方が久遠の優先順位は高かったのだ。

「……大学なんて、どこだって同じだろ」

彼は傍にいることについて説得をしたかっただけだった。その言葉が美和子にとって、どんなに嫌味になっているかの自覚はまるでない。

「そうだよね。久遠くんには分からないかもしれないね。でも、ちょっと酷いよ」
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