不埒な先生のいびつな溺愛
私が徐々に落ち着いてくると、強引なキスも優しいものへと変わっていった。

久遠くんは繊細な刃物のような人なのに、こんなに優しく触れることができるなんて思わなかった。

「……久遠くん、嬉しい」

唇の隙間からそう呟いた。彼のキスは途切れて、また私の目を覗き込んでいた。

久遠くんはすっかり変わってしまった、今まで自分でもそう思っていたはずなのに、目の前の彼を見ていると、自然と昔のままだと思えた。

「どういう意味で言ってんだよ」

「不思議なの。久遠くんといるとドキドキするのに、すごく安心する。昔から。今もそうだよ」

懐かしい空き教室の空気を思い出す。

久遠くんが思い出を詰め込んだこの畳の部屋は、あの私たちの秘密基地に似ていた。

「美和子、俺も、お前がいるだけで……」

抱き合うだけで、気持ちは溶け合った。


久遠くんはこの晩ずっと、私に愛を囁き続けた。

それは彼の十二年分の想いなのだと思うと、もう二度と彼を独りにはしない、そう思うのだった。
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