無口な告白

一人残された昼休み、私は仕方なく行き場のなくなったチョコをロッカーにしまいに向かっていた。
おそらく、一目で本命だとわかる人にはわかってしまうであろう、上品なラッピングの高級チョコ。
宛名だけのカード付き。


「振られるにしても、告白ぐらいはしたかったな……」


落ち込みながら歩いてた私には、小さな箱でさえずしんと重たく感じられた。
けれど、何気なく見やった先、途中の会議室に見覚え以上に見覚えのある後ろ姿を見つけたのだ。
こっそり中を窺うと、彼が机に伏して眠っていた。

寝姿まできっちりしているようで、いかにも彼らしい。
遠目からでもドキドキしつつ眺めてると、ふと、ある考えが浮かんだ。


ズルいかもしれない。
卑怯かもしれない。
でも今を逃せば、もう一生チャンスは巡って来ないような気がしたのだ。


そう思うや否や、私はそっと扉を開けて眠っている彼に近付いていく。

そして枕代わりに頭を乗せている彼の腕の傍に、静かにそれを置いた。

贈り主不明になるけど、行先不明よりはマシだもの。
少なくとも、私にとっては…だけど。
でも、勇気を振り絞ったチョコなんだから。


多少の罪悪感と大いなる達成感を同時に味わっていると、彼が「ん…」と身じろいだので、私は慌ててその場を後にした。


だって、私の振り絞った勇気を、その場で突き返されたくはなかったから………



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