わたしのキャラメル王子様
「なっ、だから体育祭で幻のカードひいちゃったら、沙羅はどーするの?」



もういつもの調子で笑ってる。
悠君は、やっぱりずるい。



「ニューヨークに、行く。来るなって言われても絶対行くもん」



「……えっとあの……」



悠君はそわそわしだした。



「悠君?」



「いや、それ反則でしょ。可愛すぎんでしょ!……あっちに連れていきたくなっちゃうじゃん」



「私もおんなじ気持ちだよ。離れたくないよ」



「ん?へ?」



「でも、悠君のこと信じてちゃんと待ってる。指輪、大事にするね。ありがと、大好き」



あふれてくる幸せな気持ちをどうしていいかわからなくて、彼の胸にほっぺたをくっつけた。



「どうしよう。しあわせすぎて変になりそう」



悠君は、大人びた指輪が光る私の手を取った。



「沙羅、大好きだよ」



まるで約束を確かめるような、やさしいキス。



あんな小さい頃のこと、覚えてなんかないと思ってた。
あの時、泣き虫な悠君を守ってあげなきゃって思ったのに、私のほうがきっとずっと、悠君に守られていたんだね。



もしかして、離れてしまう、会えなくなってしまうってわかってたから、悠君は毎日うちのクラスに通ってくれてたのかな。



このキレイな指輪のために
ピアノのバイト、してたのかな。



そんなふうに自惚れても、いいのかな。



「ね、悠君アイスとけちゃってるよ?」



「そんなのどーでもいいよ。こっち向いて」



少しだけ強引な、熱くて長いキス。
とけつづけるアイス。
ママの忘れ物、ずっと見当たらなかったらいいのにな。
< 133 / 156 >

この作品をシェア

pagetop