わたしのキャラメル王子様
あわてていたせいで、途中、教室から急に出てきた女の子とぶつかりそうになった。



「ごめんなさい!」



「いえ、こっちこそすみません」



彼女の手からこぼれてしまった花を一輪、拾った。
可憐な小さな白い花。
ここ、華道部だっけ。
最近の華道部は、フラワーアレンジメントもやってるって聞いたことがあった。



「折れなくてよかった、はい」



拾った花を手渡した。



「……ありがとうございます」



受け取った子と、軽く会釈して別れるはずだった。



「あ!」



でも私達は、お互い同じ声をあげた。



その子が、悠君にラブレターを渡した女の子だったから。



たぶん彼女も、私を悠君の友達として認識してるはず。
ものすごく、気まずい。



「あのー、じゃあ」



笑ってみたけど顔の筋肉はたぶん強ばってる。とにかく今は去るしかない、それなのに。



「昨日わたし……佐野先輩と一緒にいました」



「え……?」



その子は、大きな瞳で私をじっとみつめたまま、その場を動かなかった。それはまるで戦いを挑む時のような、揺るぎのない強い視線だった。




そういえば「フィアンセ」というワードにびっくりしてあまり気にしてなかったけど、あの時悠君は「断った」じゃなく「断るよ」って言った気がする。



ということは?
うそだよね?
悠君……彼女のこと、キープ、してる?



ストレートの長い黒髪のせいか、肌の白さがまぶしい。
彼女は、お花みたいにキレイな女の子だった。

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