わたしのキャラメル王子様
「沙羅、どこ行くつもり?」



「ちょっとだけ席外すね。すぐ戻るからご飯適当に頼んでて!」



「なに?どーしたの」



みんなの声も耳に入らない。
私はふたりの顔を間近で見ないと気がすまなかった。



もう店内からは見えないスタッフ専用の通路へと移動してる。



急いで後を追うと、壁の向こう側でまだ二人の気配がした。



「もともと今日はシフトじゃないし、ラストまでなんて約束してない」



不機嫌なせいかくぐもった低い声がする。でもそれさえ悠君と似てる気がする。



「じゃあ私達を騙してたこと、全部パパに言いますよ?」



「どーぞ。好きにしていいよ」



「この業界の横の繋がり知らないんですか?パパの一言で働かせてくれるお店なんかなくなりますよ。雇ってたのが高校生だったなんてただの不祥事だもん」



王子の眼鏡が不穏に曇った気がした。
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